うちのクリニックの受付は、開業以来某国立女子大の心理学科の学生たちが外来の受付業務を支えてくれている。
彼女達が同じ”心”の分野を携わる者同士なのと、同じ国立大出身なのか、とても小生と気が合い、30年近く関係が長続きしている。
彼女たちは学士課程と修士課程で学んでいる。そのため約2~6年間は外来の受付を担当してくれている。
その中の一人に、相手を褒めるのがとても上手なAさんがいた。
Aさんは、ある日“私の治療”を評して、ケヅカ・マジックと命名してくれた。
”先生は治療が上手だと、患者さんが褒めちぎっています!”
”今まで受けた治療と全く違う、非常に独創的な治療をされる!”
”治療から勇気を与えられる”
“診察室に入る時は悲しみに沈んでいるのに、出てくる時はみんな喜んでニコニコして診察室から出て来ます!”
”ほとんどマジックだわ!!!”
ややほめ過ぎで、半分からかいも混じっていそうである。
もう一人、日本医大呼吸器科元教授の工藤翔二先生にも、よくお誉めの言葉を頂く事が多い。
” 毛塚先生は、紹介したケースを、みんな治してしまう! それも短期間でだ!
一回の診察で治しちゃった事もあったよ! 他の先生が1年以上かかって治らないのに、 凄い!! あっぱれだ!!”
症例紹介 ”驚きの階段設置“
父は国家公務員の局長まで上り詰めた人、母親は某大学の法学部の教授。
小さいときから、厳しいしつけをされたという。
一番こたえたのは、自分の自由な発想や発言を認めてもらえず、小学生のころから吃音や確認強迫に苦しめられるようになったことだ。
結婚はできたが、妻や子供の前でも、両親から遠慮なく叱責され、極度の自信喪失状態で、休職直前の状態であった。
確認強迫やうつ状態が周期的に悪化し、精神病院に何回か入院せざるを得なかった。
初診の時から、この方の問題点は両親から“心の距離”を取れないことだと漠然と感じていた。
数回の面談の後、両親から適切な距離を取るために、玄関を別に作ることを提案した。
彼は初めはビックリして、拒否的であった。
私は彼に、「 妻も迎え子供も2人産んだのに、全く子供扱いされている。
貴方のために“別の玄関を作る目的”は、貴方に父親としての自信を与えるためだ。
“両親に壊されてしまっている”君の”父親としての自信と尊厳”を、両親から守ってあげたいからだ!! 」
と繰り返し熱く説いた。
しかし、やがて私の説明に感動し、実行に移した。
なんと驚いた事に、数週間後玄関から若干離れた場所から2階に上がれる立派な鉄制の階段をつくってしまった。
その後は、徐々に両親に自己主張出来るようになり、両親の介護も、最後も看取ることができた。もちろん精神病院に入院することもなくなった。
精神分析的治療では、こんなに短期間に自我を強化するのは不可能だろう。
”別の玄関を作る目的は、貴方に父親としての自信を与えるためだ”という説明は、
受身的中立性から一歩前に踏み込んだ、私の治療の中心概念である”積極的中立性”が機能している。と言える。
だから見事に症状が改善したと考えている。
ケヅカ・マジック と呼んでいいだろう。